第9章 交淡如水 【冨岡義勇】 1
あやは蝶屋敷に戻って病状と義勇殿が屋敷に戻った理由を報告すると、
「これだから、あの人は・・・。あやの仕事を増やして。」
と、しのぶはさらに怒っていた。
夕刻
あやはまた荷物を持って、冨岡邸を訪ねる。
「失礼します。」
「あぁ。」
義勇は顔が赤く、声も昼より少し小さい。明らかに朝よりも弱っていた。
座ることはできるということなので、座らせて包帯を替えながら、汗を拭いてまた着替えさせる。
調子が悪そうなので、急いで食事と服薬を済ませ、寝てもらう。熱があるので、もう少し冨岡邸で様子を見る旨を鴉に伝えてもらう。
熱が下がらないので、頻繁に額の手ぬぐいを替え、首や胸元の汗を拭う。
もうすぐ夜明けという時に、あやが少しウトウトしながら義勇の首の汗を手拭いでいると、熱で朦朧としている義勇に勢いよく手首を掴まれた。そのまま腕を横に叩きつけられ、あやも体勢を崩す。義勇の横に側臥位で寝転ぶ形になる。
義勇はまだ赤い顔で寝ており、鬼に襲われる夢でも見ているのか、一向に握力を弱めようとしない。
「仕方ない。」と、柱の力をどうすることもできないと悟ったあやはそこで寝ることにした。
「・・・・。」
「・・・・。」
目が覚めた義勇は困惑していた。なぜか横に人が寝ている。
(この子は確か・・・紫天城と言ったか。・・・夜の間も世話をしてくれていたのか?)
(なぜ隣にいるのかは分からないが、風邪を引かせるのは悪い。が、布団はこれしかない。)
義勇はもぞもぞとあやの近くにより、布団の中にあやを入れ、また眠ってしまった。