第7章 ※赴湯蹈火 【煉獄杏寿郎】2
杏寿郎はあやの顔をじっと見ながら話を聞き、頭を下げた。
「俺の思いを押し付けて、君の尊厳を傷つける発言や行動を詫びたい。君がどうして俺を遠ざけたのか良く分かった。」
「杏ちゃん。・・・その言葉は本当に嬉しい。私の気持ちを分かってくれてありがとう。」
「あや、しかしだ、俺も・・・君と同じで本気で君の夫になるつもりだった。君以外の妻はいらない。」
「・・・・できるわけない。」
「そうかもしれんが、できる限り悪あがきをしてみたい。」
「杏ちゃん。しつこい。諦めて。これで杏ちゃんがもうここに来ないなら、私は宇髄殿に身請けしてもらうことになる。」
その言葉を聞いて杏寿郎は、少し何かを考えると大きくため息をついて言う。
「・・・そうか。分かった。宇髄はいい男だからな。ここにいるよりも安心だ。」
杏寿郎に言いながら、あやは自分にも言い聞かせた。「しつこい。諦めろ。」と。自分だけではなく、杏寿郎も7年間苦しかったのだと思うと少し心が軽くなった。二人でお互いへの気持ちを密かに持ち続けて生きていくのならそれはそれで幸せかもれない。
「杏ちゃん。もう大門は閉まった。明日の朝の開門まで出られない。今日で終わりなら、・・・私を抱いてくれる?」
「ふっ・・いろ葉をか?あやか?」
「どっちがいい?」
「あやに決まってる。いろ葉も美しいが俺には当たりが強い。」
「じゃあ何もしないよ?」
「しなくていい。俺がする。名前も呼んでいいか?顔もよく見たい。」
「杏ちゃんのお手並み拝見。」
「よせ。あやを捜していて何も技は磨いて無い。体力だけだ。」
「あや・・・もう抱きしめてもいいのか?」
「・・どうぞ。」
「・・・あや、会いたかった。大きくなったな。」
「・・・私を子どもみたいに。・・杏ちゃんだって。大きくなって・・・男前になった。」
お互いの名前を何度も呼んで、何度も抱き合った。杏寿郎の腕の中は暖かく、抱かれるのは幸せだった。
翌朝。あやは大門まで杏寿郎を送って行き、その足で楼主に宇髄との身請けの話を進めてもらう様に頼んだ。
しかし、煉獄杏寿郎は諦めの悪い男だ。
確証が持てないのであやには言わなかったが、少し困難だが考えが一つあった。