第5章 ※燎原之火 【煉獄杏寿郎】3 完
紫天城が無事、大学に合格した。俺の役目ももうすぐ終わりだ。
後は卒業式と引っ越し。
彼女の甘えた声。感情が素直に出る表情。頼りない様に見えて、一人で暮らして自立していて、寂しいとは絶対に言わなかった。何かを強請ることは殆どないのに、俺には「ありがとう」と必ず言う。
彼女を見ていると、弟の千寿郎を見ている時の様な愛しい気持ちになった。
・・・思っていた以上に寂しい。
元々期限付きの恋愛だったのだ。
彼女はいつかこの1年をいい思い出だったと思ってくれるだろうか。
卒業式の日、晴れやかな顔をして紫天城は卒業していった。
他の子といると普通のあどけない笑顔の高校生だ。
その日から少しずつ会える日や時間を減らしていった。離れる準備だ。
俺の仕事が年度末で忙しかったという口実で。
会いに行った日はいつもと変わらず「せんせい、ありがとう。」「せんせい、大好き。」とふわふわと笑って、ふわふわと話す彼女。
引っ越しの前日、荷物の梱包を手伝ってほしいと紫天城から連絡があった。
引っ越しの準備が終わったら夕食を食べに行こうと返した。