第20章 ※炎虎 【煉獄杏寿郎】3
月曜日の午前
「杏寿郎さん、あいつ何も言いません。」
「間違えて連れて来たってことは無いんだな。」
「はい。確かです。」
杏寿郎は例の雑居ビルに来ていた。
向かった先は前とは違う階でとても狭い部屋がいくつも並んでいる。一番奥の部屋で裸の男が腕を後ろに縛られて床に転がされている。もとはシャワー室か何かだったのだろう。コンクリートの壁に床には排水溝。そして強い漂白剤の匂い。
漂白剤はタンパク質を溶かすことができる。髪の毛や、皮膚・・・・それ以外も。
男は目をギラギラさせながら杏寿郎を睨む。
杏寿郎は口元だけ笑顔を作って言う。
「君、数日前は俺の組の子と仲良くしてくれたそうじゃないか。彼はそんなに羽目を外す子じゃなかったんだが・・・君のお陰で楽しすぎて帰って来なかったぞ。」
「・・・」
「君は誰から依頼された?俺は是非お礼がしたい。」
「・・・・」
「・・・まぁ。最初から言うとは思っていない。・・君、俺はやってみたいことがあるんだ。つきあってくれ。」
煉獄が目配せをすると、裸の男はストレッチャーに仰向けにされ、肩と腰、太腿を固定される。頭の上の方に水のタンクが設置された。杏寿郎は男の顔を上から覗き込む。
「俺は歴史が好きでな。昔、中国の文献で見つけたんだ。」
「額に、不規則に水を垂らすだけだ。たったそれだけで精神が一日も持たないんだそうだ。痛くはないぞ。時々冷たいだけだ。・・・それだけで人がどう壊れていくのか興味深くてな。」
「外にいる。何か言いたくなったらいつでも聞くぞ。さぁ我慢比べだ。」