第15章 天馬行空 【宇髄天元】 1
「・・・くん」
「はい。」
「・・くん」
「はい」
「宇髄くん」
「・・・・はぁい。」
宇髄君・・今日は朝から来てる。
・・・・ん?またか・・。
朝のHR。出席を取って、簡単に事務連絡をする。特に話は無いので、終了。
生徒たちは一校時目の準備やお喋りを始めてざわざわし出す。
私はそっと宇髄君の近くに行き、小さな声で言う。
「宇髄君、ちょっと話がある。」
「ここで聞くぜ。あやちゃん。」
いつもの少し冷たい笑顔で返してきた。それを無視して、さっきよりも少し強めの口調でもう一度繰り返す。
「宇髄君。来なさい。」
渋々私について廊下に出た。
「なに?」
宇髄君と私、身長差が30センチ以上あるだろうか。宇髄君はわざと私の近くに立つ。私が見上げて、宇髄君は見下ろす。
「顔、消毒しに行こう。」
「あれ?バレちゃってた?」
私は宇髄君をチラとみると、保健室へ向かう。素直に彼もついて来た。
保健室には誰もいなかった。私は宇髄君を丸い椅子に座らせてから、深く被っていたフードを取る。思っていた以上に痛そうでうわっと顔を顰めた。顔の左側が青く腫れている。切り傷がいくつもあった。切り傷に消毒をしながら宇髄君に聞いてみる。
「朝からどうしたの?」
「さぁ?転んじゃった?」
宇髄はじっと私の顔を面白そうに眺めながら言う。
私はそんな彼を見て一応、眉根を寄せて怒ったような顔をして、彼の右手を取る。手の甲にも傷があり、指の付け根の骨の所が青く腫れていた。そこにも消毒をする。
「ねぇ、宇髄君。こんなになるまで殴って。相手はこれ、・・生きているの?」
「知らねぇ。生きてんじゃねえの。手加減したし。・・・相手より俺の心配してよ。あやちゃん。」
「・・・・転んだんでしょ?ん?天君は転んでお膝もすりむいちゃった?」
「あはは。天君言うな。膝、擦りむいてねぇよ。」
「宇髄君・・・ほどほどにしないと・・・。頭殴られるの危ないよ。」
保冷剤をカバーに入れて顔の腫れている所に当てる。「冷てっ」と言いながら受け取る。