第13章 炎炎 【煉獄杏寿郎】3
金曜日も朝練があった。教官室に入ったが、泣いてしまうとこの後の授業が困るので、お互い言葉選びもキスも慎重になった。顔を見ない様に抱きしめ合う。
「煉獄先生、三週間ありがとうございました。」
「あや先生。三週間お疲れ様でした。君は先生に向いてる。いい先生になるぞ。頑張れ。」
「・・・煉獄先生みたいな先生になれるように頑張る。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・杏寿郎、連絡先を消そう。」
「・・あぁ。約束だからな。」
お互い体を少し離し、軽くキスをしてスマホを出す。
メッセージは何度も文を作り替えて送ろうとした。電話も発信ボタンを押すだけの画面は何度も開いた。取り返しがつかなくなるのが怖くて、どちらも最後のタップはできなかった。
結局、電話もかけなかったしメッセージも送らなかったなと思いながら、きっとこれで良いんだと自分に言い聞かせて、連絡先を消去した。
予鈴が鳴った。職員室へ行きながら雑談をする。この廊下を二人で歩くのはこれが最後だ。
今日の放課後は実習生は実習の打ち上げの飲み会があるらしい。
俺達は明日、気の合う教員仲間で飲み会だ。
明日遅くなる代わりに俺はいつもよりも少し早く家に帰った。
寿美は俺の好きなものをたくさん作って待ってくれていた。
教育実習の事を色々話した。寿美はにこにこしながら俺の話を聞いてくれた。
話の最後の方に寿美が言った。
「杏寿郎さん。女子大生と一緒にいるから心配で変な態度取ってごめんね。」
「いいや。全然気にしていない。俺も忙しくてなかなか家にいられなくてすまなかった。」
「ううん。先生のお仕事って大変だもん。お兄ちゃんもいつも帰って来るの遅かった。」
その後も寿美と適当に話をして、風呂に入って、寝た。
夜中何度か目が覚めて、明け方眠れなくなったので、ジョギングに行った。夜が明けるまでしばらくあちこちを走った。
・・・俺はどうやらショックを受けている。