第2章 ※恵風和暢 【不死川実弥】2 完
あやはふぅふぅと肩で息をしていたが、「うん。分かった。」と小さく言い、少し悲しそうに微笑み、実弥をチラと見た。すぐに背を向け身支度を整え始める。
実弥はその様子を見ながら、ちくんと心が痛み、何故か涙が出そうになるのを堪えて、目を逸らす。
自分が抜き出したものを仕舞おうと目を落とすと、畳と陰茎に薄らと血が付いていた。
ギクリとして全身の血がさっと引き、咄嗟にあやの方へ行き、謝る。
「あやサン、すまねぇ。あんた処女だったのか?」
「・・・そうだけど。別にそれに特に意味はない。謝らないで。」
着物を着ながら、実弥の方へ少しだけ顔を向けて言う。
「・・・あやサン。あんた。本当に何しに来たんだァ?俺に乱暴されに来たんじゃねェんだろ?」
「・・・実弥が傷ついた顔してたから。」
「・・俺はもうガキじゃねェんだから、構うなよ。」
あやの言葉を聞いて、実弥は溜息交じりに言う。
あやは、実弥の方へ体を向け、実弥の頬を両手で挟み、じっと目を見て言う。
「ガキじゃん。匡近さんが死んでからずっと泣きそうな顔して。悲しみも苦しみも自分で処理できない。泣くことだって1人じゃできない。」
「そうやってイライラして、自己嫌悪に陥って自分を傷つけて・・・。何でわざと私に乱暴にしたくせに今にも泣きそうな顔してるの?」