第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2
俺はあやが好きなのを改めて自覚した。では俺はどうしたいんだろう。寿美と別れて、前世の約束通りあやと結婚する?
不死川の言う通り、前世は前世だ。もうそこで俺とあやの縁は終了だ。寂しい別れだったが、すべてが円満に終わる縁ばかりではない。あれで完成だったんだ。
そして今生では寿美と縁があったのだ。寿美の望む様に子供を作って幸せな家庭を築くのが今生の俺の人生ではないのか。また愛する努力をしていけばあやと出会う前の様になれるはずだ。
・・・・・・愛する努力?愛に努力がいるのか?努力しなければ愛情が続かないのなら終わりにしてもいいんじゃないか?
寿美とあやだったら、・・・・先にあやに会っていたら・・・間違いなくあやと結婚しただろう。
・・・あぁ・・・・これは最低な思考だな。不倫する男の心理が良く分かった。
ガチャ・・・
居間の電気を消して寿美が寝室に入ってきた。そっと布団に入って来ると俺の背中に抱き付いてきた。俺は寝ている振りをする。
「杏寿郎さん。大好きなの。・・・何があったの・・・?」
独り言のように俺の背中に呟くと、寿美は弱々しい声で泣いていた。
暫く、くすんくすんと鼻をすする音が聞こえていたが、そのうち寝息に変わった。
優しい寿美は俺の変化に気付いているが・・・問い詰めてはこない。カマはかけてきたが・・・。