第1章 first contact ...
「別れよう」
……
何度目だろう。この言葉を聞くのは。
私の答えは決まっている。
「わかった」
毎回静かに終わる私の恋は、いつも長続きしない。
原因は解っている。
私が仕事に没頭しているからだ。
朝早く起きて、夜も早く眠りにつく。
人手不足なうえに、キツい労働。もちろん休みも少ない。
「お前さぁ」
「なに?」
フラれた男から聞く言葉も決まっている。
「他に好きなヤツいんだろ?」
いるわけない。だってそんな時間がない。
「いないよ」
そう言うと、ほとんどのヒトは何故か怒って出て行く。だけど今回のヒトは、本当に優しいヒトだったんだろうなぁ。
「もっと自分の気持ちに正直になれば?」
「……」
アドバイスを貰ってしまった。
正直になったとしても、やはり思い付く相手すらいない。
「考えてみるね」
ニッコリと笑うと、そのヒトは呆れた顔をしてドアを閉めた。