第12章 困惑
「食満先輩と立花先輩と喜八郎の会話を聞くまでは、俺は女だと一切気が付かなかった!!すげえな忍術学園!!こんな本格的な女装の訓練も行っているのか!!!」
と、いつもの通り熱く彼について語り始めて喜八郎は心底呆れていた。何だそんなことか…と安心しきっていたが、守一郎はまた声を落とした。
「…でも、暗殺者なんだな」
と、女装の件と暗殺の件は別物の扱いのようだった。
女であることはいいけど、やはり敵だと認識するのは難しいようだった。
「…まぁ、暗殺者とはいってもこっちに危害は加えないみたいだし。普段通りにしていればいいんだと思うよ」
「そ、そうか!そうだよな!!」
「ん?」
「ずっと心配だったんだ。暗殺者と一緒に暮らすってどうしたらいいのか分からなかったんだけど…。そうか、いつも通りでいいのか!!よかった!!」
と、守一郎は清々しい顔をしながら叫んだ。
さらに詳しく聞くと、守一郎は彼が暗殺者だと知り今までと同じような友達には戻れないと思ってしまったようだった。
しかも、喜八郎には言わないが彼のあの悲しそうな顔の意味が分からなかったためかなり深刻な問題だと思っていたようだった。
「はぁ…心配しすぎだよ。」
「そうか!いやー悪かったな!!」
「…ねぇ、守一郎は若月の事どう思ってる?」
「ん?」
喜八郎は少し不安に駆られてしまい、守一郎に思わずそんな質問をしてしまった。守一郎はその質問の真の意図は察していないのだろう満面の笑みで答えた。
「俺は若月の事大好きだぞ!同級生として!!」
という屈託のない笑顔だった。
喜八郎は取り越し苦労だと分かりはぁ…と再びため息をついてまた穴掘りに向かった。
「あ、喜八郎!」
「もういいでしょ。穴掘ってくる」
「おう!!ありがとうな!!」
と言って、2人は別れた。
すっきりした表情の守一郎に対し、喜八郎は安心したようなちょっと不安そうな…複雑な顔をした。
守一郎にというより、途中で離脱したタカ丸の事が・・・