第5章 母校
状況を説明して、
申し訳なさそうにしていた消太くんも
時間が経つと落ち着いてきたようで
すっかりいつも通りの消太くんに戻っている。
2人でコーヒーを飲み、
私は荷物をまとめてチェックアウトを済ます。
「この後はどうするんだ?」
「今日は実家に一泊して明日福岡に帰るつもり。
最近顔出してないし、雄英に勤務することも報告しないと。」
「そうか」
「タクシー拾う?」
「いや、いい。
俺の家すぐそこだから。」
私はバスで移動するため、
近くのバス停まで消太くんと歩く。
「送ってくれてありがとう」
今度はちゃんと。と付け加えると
消太くんはまた申し訳無さそうな顔をした。
少しからかいすぎただろうか。
「…いや、ほんと悪かった。
また来月な。頼りにしてるよ、副担任。」
「はい、よろしくお願いします!」
私の新生活ももうすぐ始まる。
新たなスタートラインだ。
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久しぶりに実家に帰ると
両親は張り切ってご馳走を用意してくれていた。
雄英の教師になることを伝えると
両親は大歓迎のようで嬉しそうだった。
仏壇に手を合わせ、兄にも報告をする。
(お兄ちゃん、私頑張るからね)
心の中でつぶやくと
窓から風が通り抜けカーテンを揺らした。
まるで兄が返事をしてくれているような
朗らかな風が私の髪をなぞった。
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一旦福岡に戻り、
事務所の荷物を片付けたり
引越しの準備を進めたり
慌ただしく日常が過ぎる。
そして最後の出勤日。
勤務を終えてから
所長と私の後任のサイドキックに挨拶をする。
明日は引越し。
次の日は部屋を整理するために使い、
ついに明後日から雄英高校の教師として初出勤する。