第36章 合同戦闘訓練
私は、心操くんならすぐ気が付くと思っていた。
鋭い子だし、とても聡い子だから。
だから驚きはしなかった。
見たところ、消太くんも驚いていない。
多分、私と同じ考えだったのだと思う。
「それに、霞先生が妙に力入ってるから。
物間たちも霞先生がいつもと違って大人しいって言ってたし……」
「え!?」
「オマエじゃねーか……」
消太くんに肘で小突かれた。
ブラド先生もジト目で見つめてくる。
「まあ、とりあえず
まだ講評の時間が残ってる。
早く戻れ。」
***
「そんなに力入ってたかな~?」
第五セットの講評を終え、授業は終了。
心操くんの編入については今後、職員会議で協議をするがおそらくはこのまま編入が決定するだろう。
私は雲で浮き上がりながら
下にいる消太くんに話しかけた。
「今日はやたら静かだなとは思ったよ。
いつもなら生徒たちにその場で声をかけてアドバイスしてるのに、今日はノートにメモ取ってばっかりだったろ。」
確かに……。
よく見てるなぁ……。
いつもだったら、試合で負けた生徒にひと声かけるかもしれない。
反省点は講評の時間でブラド先生や消太くんがそれぞれ指摘してくれるから、私が補足として良かった所を伝える。
今回は人数が多かった、というのもあるが
個人個人で声をかける事はしなかった……。
それだけ余裕がなかったってことだなぁ……。
「まぁ、無理もないよ。
俺だって少し私情を挟んだからな。」
「中断しなかった事?」
「あぁ……。
本来なら即中断だろ。
……だけど、まぁ少し欲が出たな。
俺個人として、もう少し試合を見てたかったんだ。」
消太くんは早足で歩きながら
眩しそうに目を細めて天を仰いだ。
そして私と目が合うと優しい顔で微笑んだ。
思わず、パッと視線を逸らす。
……急にそんな顔、ズルイ。