第35章 深く深く
「霞、ちょっといいか?」
リカバリーガールから完治のお墨付きをもらって、ルンルンと部屋でお酒を呑んでいたら、ドアがノックされて消太くんの声が聞こえてきた。
「どうぞー。」
ガチャリとドア開けて消太くんが入ってきた。
仕事着と大差ない上下黒のスウェット姿だ。
「……飲んでんのかよ。」
「今日、やっと許可が降りたの〜!
消太くんもなんか飲む?」
それは良かった……と笑ってからビールくれ、と告げてソファーに腰掛けた。
冷蔵庫からビールを取り出して消太くんに渡す。
カシュッと良い音を立てて
缶を開けたので気持ちばかりの乾杯をした。
「……心操、励ましてくれたんだな。」
「ああ、なんか聞いた?」
「いや、参加の可否を即答しなかった時点で何か悩んでるのは気付いてたんだが、正式に参加したいと言ってきた時には顔が晴れてたからな。
相談するとしたらお前くらいしかいないだろ。」
やっぱり。
消太くんはきちんと生徒を見ている。
「今考えれば、霞が戻ってくるのを待ってたんだろうな。」
「そんな、買い被りすぎだよ。
そうだったら嬉しいけどね。」
つい、顔が緩んでしまう。
心操くんに頼られている事も、そして、こうして生徒想いな消太くんとのんびり過ごせている事実も、すべてが幸せだ。