第33章 あなたのヒーローに
「霞」
誰かが呼ぶ声が聞こえる。
聞き覚えのある声……
えっと、誰の声だっけ………
「霞」
そうだ、お兄ちゃんの声だ………
高校生の時に亡くなったはずの兄、
白雲 朧
私の目標だった、大好きなお兄ちゃん。
「霞、消太が心配してる。
早く起きて安心させてやれ」
消太くん?
ああ、そうだった。
私、荼毘と戦って、怪我して病院に運んでもらっていたんだっけ。
連絡を受けて雄英から駆けつけてきてくれたのだろうか。
………起きるのが怖いな。
確実に怒られるから。
「消太が、泣いてるぞ。」
消太くんが、泣いてる……?
どうして………?
「霞、後悔しないようにな。
お前なら大丈夫だ。頑張れ。」
お兄ちゃんの声が遠くなる。
私は重たい瞼を何とか開ける。
少しだけ見えた兄の姿は………
何故だか真っ黒な靄のように見えた。
兄の声が聞こえなくなった。
起きなくちゃ。
兄の声が本当だったら、消太くんが心配している。
「消太くん、泣かないで……」