第22章 できる事
コンコン。
朝早くに部屋をノックする音がした。
私はまだ部屋着で、歯を磨き終わったところだった。
「はーい。」
ドアを開けると消太くんが立っていた。
すでに真っ黒なツナギのヒーロー服に身を包んでいた。
「おはよう。朝早くに悪い。
呼び出しが入った。クラスの方、頼むな。」
それだけ言うと、スタスタと歩いていく。
さすが合理的主義。連絡事項は簡潔に。
私も慌てて後を追い、
エレベーターの前で見送る。
「イレイザーヘッド、生徒たちをお願いします。
気をつけて。絶対帰ってきてね……。」
消太くんが一歩私に近づいた。
まだセットしておらず乱れた私の髪を
消太くんの手のひらが滑り、顔周りのひと房を耳にかけた。
「行ってくる。」
優しく微笑んでから
消太くんはエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの扉が閉まり
ステンレスに反射して写る私は真っ赤だ。
「天然タラシめ……」