第1章 屋上と横顔
消太くんとひざしくんに出会ったのは
私が雄英高校1年生の頃。
「いたいた、お兄ちゃ~ん。」
「おう、霞。どうした?」
「お弁当!」
ん!っと母特性のお弁当の包みを兄に押し付ける。
教室をのぞいてみたがいなかったので屋上かな、と来てみればビンゴだった。
念願の雄英高校ヒーロー科に入学した私は
何度言ってもお弁当を忘れていく
お兄ちゃんこと白雲朧のお弁当配達係となっていた。
ほぼ毎日のように忘れていくもんだから
学食で食べなよ!と言っているのだが
母がせっかく作ってくれるのだから!と言って聞かない。
それに友達がガヤガヤしたところが苦手で放っておくとすぐ一人でどこかに行ってしまうらしい。
兄は昔からクラスの端っこにいるような人を放っておけない性格なのだ。
その人はいつも簡易的な食事しか取らないから自分も一緒に食べられるように
母に頼んでお弁当を作ってもらっているようだった。
それなら忘れずに持っていきなさいよ、まったく。
「おお!ありがとな、霞!
あ、これ俺の妹。ヒーロー科の1年」
「兄がいつもお世話になってます。妹の霞です。」
兄の両サイドに座っている二人にペコッと頭を下げ
軽く自己紹介をした。
「こっちがひざしで、こっちがショータ」
兄が金髪の男性を指差してから
黒髪の男性を指差して雑な紹介をした。
「白雲、妹いたのかよ!しかも可愛いじゃねえか!
よろしくな、シスター☆」
兄の左隣にいた金髪にサングラスの男性。
とてもハイテンションな上に声が大きい。
楽しそうな人だな。
そして兄の右隣にいる黒髪の男性はどうも。と小さく呟いた。
手には栄養補助食品が握られていた。
兄が学食ではなくお弁当にしている理由はこの人なのだろう。
「可愛いだろー?手出すなよ?」
な!と兄が消太くんの首にガシッと腕を回した。
ものすごく嫌そうな顔をしているが、無理矢理振り払ったりはしない。
どうやら兄の一方通行ではないようだ。少し安心した。
「ひざしくん、ショータくん。
めんどくさいお兄ちゃんだけど仲良くしてやってくださいね〜!」
それじゃ、と屋上を去る。
私もさっさと戻ってお弁当食べなくちゃ。