第16章 交差する感情
“駅前のビルの屋上にて待つ”
ひと言だけメールが入っていた。
屋上で待ち合わせしようなんていう知り合いは一人しかいない。
「ホークス!」
「霞サン、早かったっすね~。」
「いきなりどうしたの?」
「用がないと、来ちゃマズいですか?」
そんなことないけど、と返事をし屋上のフェンスに背中を預ける。
ホークスはフェンスの上にうまくバランスを取って立ち、これ良かったどうぞ~。と缶コーヒーをくれた。
ホークスが飲んでいるのは甘いやつ。
私に買っておいてくれるのはいつもブラック。
「記者会見でちょっと顔みたら、会いたくなっちゃったんですよ。
スーツ姿、似合ってましたね。」
「ありがと。ヒーローってスーツとかあんまり着る機会ないもんね。
ホークスも用意しておいた方がいいよー。
女性問題とかで謝罪会見するかもよ?」
アハハ、と笑いかけてみた。
ホークスは私の方をチラッと見て微笑む。
「俺、モテますけど最近は一人の女性に夢中なので。
その辺は問題ないかと。
その女性、なかなか難攻不落でね。」
モテるのは否定しないのね……。
まあ、モテない訳がないか。
顔良しスタイル良し、今をときめく若手のホープだものね。
でも私が九州にいた頃は浮いた話は一つも聞いたことがなかった。
ちょっと前までは熱愛報道たくさん出てたわよ~ってマッスルレディが言っていたのを思い出す。
そのホークスに難攻不落と言わせる女性って……
どんな百戦錬磨の女性なのだろう。
香山先輩のような色気の漂う大人の女性がイメージされる。
「すごい女性もいるもんだ……」