第14章 折れない意志
林間合宿襲撃事件から一晩が明けた。
もちろん寝付けるわけでもなく、
身体は疲れているはずなのに目を閉じても頭は冴えている。
外はまだ薄暗く、いつもであればまだ眠っている時間。
薄手のカーディガンを羽織って外へ出た。
清々しいほどの朝の空気が今は、少し辛い。
「おはよう。霞くん。」
「オールマイト……」
後ろから声をかけられ
振り返ると世間から知られた姿とは程遠い、ガリガリ姿の優男が立っていた。
「早いね。寝られなかったのかい?」
「ええ……オールマイトも?」
「私はいつもこの時間さ。
……爆豪少年のこと、考えているのかい?」
「はい。
それに他の生徒たちもラグドールも。
私にもっと力があれば……って考えてしまいます。」
消太くんにもひざしくんにも言えなかった弱音。
二人に弱音を吐くと頼もしい兄貴分たちはきっと私を甘やかしてしまう。
そうなると、自分がどんどん惨めになるだけだと思った。
オールマイトには話せたのは、この人は平和の象徴だから……私のちっぽけな弱音など笑って吹っ飛ばしてくれそうだったから。
「君はよくやったさ。
君がいなかったら生徒たちの救助はかなり遅れただろう。
もっと被害が出ていてもおかしくなかった。
……私はそう思うけど、君は納得はしないよね。
私自身も生徒や同僚のピンチに現場にいてやれなかった不甲斐なさでいっぱいさ。
でも、私はここから覆すぜ!」
バフン!と音をあげて
オールマイトがマッスルフォームになった。
拳をグッと握っている。
「見ていてくれ。
私が必ず、爆豪少年を救おう!
そして平和の象徴が平和の象徴たる所以を奴らに思い知らせてやろう!!」
またバフンッとトゥルーフォームに戻った。
「それに霞くんにはたくさん事務仕事を助けてもらっているからね。
君の想いは全部私が引き継ぐさ。」
オールマイトはニコッと笑った。
「……ふふっ、No.1を助けられているなんて光栄です!」
私もニコッとオールマイトに笑顔を返す。
苦しいときこそ、笑っていなきゃ。
オールマイトのように。
「オールマイト、ありがとうございます。
私もここから覆してみせます!」