第12章 いざ合宿
ついに合宿当日。
A組の生徒たちはウキウキが止められない!
といった様子でみんなソワソワしている。
無理もない。
消太くんの合理的虚偽のおかげで
赤点組は一度どん底に落とされ、
実際は全員で合宿に行けるという喜びでいっぱいのはずだ。
相変わらずの物間くんがA組に噛み付き、
拳藤さんに手刀いるみんなを見て苦笑いしか出ない。
私はA組のバスに乗り込み、
消太くんとは通路を挟んで反対側に腰掛けた。
バスが出発し、消太くんはすでに夢の中。
生徒たちに注意するのは諦めたらしい。
私も振り返ってみるが
A組のみんなはワイワイと盛り上がっている。
まあ、学校行事を楽しむのも学生の仕事か。
そう思って、目的地までの生徒たちのつかの間の楽しみを邪魔しないように努めた。
「みんな~、バスから降りてね~!」
1時間ほど走ったところでバスは止まり、
生徒たちをバスから降ろす。
みんなはまだ休憩だと思っているようだ。
「よう!イレイザー、霞。」
降りた先では猫耳に尻尾、ミニスカートと
アイドルオタク心をくすぐりそうな色違いのヒーロー服に身を包んだプッシーキャッツの二人が待っていてくれていた。
「マンダレイ!ピクシーボブ!」
「ご無沙汰しております。」
消太くんが頭を下げた。
私も慌てて、お世話になります!と頭を下げた。
マンダレイとピクシーボブはワイルドワイルドプッシーキャッツの決めポーズを自己紹介がてら生徒たちに披露した。
少し生徒は引き気味だが、ヒーローオタクの緑谷くんは目は輝きを放ちプッシーキャッツ情報をペラペラ話し出した。
緑谷くんはヒーロー歴12年のベテランという言葉が引っ掛かったピクシーボブに顔面を押さえられ「心は18!」と復唱させられていた。
私も若くはない歳なので、ピクシーボブの気持ちはわかるような気もする。