第5章 白銀
「…」
「ヒッヒッ、まさか、まだ生きていたとはねぇ。
アタシはお前がオペオペの実を手にしていたことは知らなかったよ。
医者で海賊なんざ、変な輩がいるもんかと思ってはいたがね。」
「鷹の目は、俺を知っていた。
…アイツは、本当に俺を探していたのか?」
「それは本人にしか分からない。…ただ、、もし、鷹の目がお前の能力を知っていたのなら、それは政府の情報を盗んだんだろう。
政府はお前の能力を隠しておきたいようだから。」
「あぁ。そうだろうな。」
鷹の目は俺の能力も知っていた。
だが、本気で探していたなら、もっと早く俺と接触していた筈だ。
能力を求めるなら、俺の存在を知った時点で脅しでもなんでも使って治療させればいい。
悪魔の実を復活させるために殺すことだってできたはずだ。
…何故来なかった?
鷹の目に本気になられたら足元にも及ばない俺を、何故今まで泳がせていた?
「あぁそれと、、」
まだ何かあるのか?
随分とお喋りなババァを睨みつけるように見る。
「あの小娘の名前、隠しておく方が利口だね。
ファミリーネームも、Dの名も。」
鷹の目も同じようなことを言っていたな。
確か、海賊に追われてるんだったか。
「何故だ。」
「パトラ、というのは北の海の貴族の名だ。
今はもう没したはずのね。」
「どういうことだ?」
「さぁ、詳しくは知らない。
一族の頭が肥満で、適当に治療してたんだ。貴族は金になるからね。
まだ治療は途中だったんだが、、どうやらその一族の頭の娘が引き起こした何かが原因で、海賊に皆殺しにされたんだと。」
「ほう。」
「Dは、、まぁ、目立つからね。隠しとく方が色々と便利だ。」
その海賊にカラは追われている、と。
なるほどな。
そのカラの母親が引き起こしたっていう事件が鍵だな。
このババァ、Dについて、何か知ってるのか?
…いや、それはまだいい。
俺がDだとバレるのは避けたい。
まだ、その時ではないはずだ。
「わかった。気をつけよう。」
俺はそう言って1度船に戻ろうと背を向けた。
「まさか、Dの意思が生きていたとはね。」
ドクトリーヌのその言葉は誰にも届くことなく、部屋に溶けていった。