【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第12章 君は誰の手に落ちる
「お前…自分が何をしているのか分かっているのか!?」
その言葉を無視して沖矢は男のスーツのポケットを漁った。
縦5センチ、横3センチほどの黒い箱には小さな赤いボタンがついている。
「ホォー…なかなか良いものをお持ちですね…」
「おい、離せ…!!ぐあぁっ!!」
「下手に動くと骨折してしまいますよ?」
努めて丁寧な物言いではあるが、
沖矢は男を離すどころか逆に掴んだ腕の力を強めた。
『風見さん!応答してください!風見さん!』
男のつけたヘッドセットから声が漏れる。
沖矢はそれを風見の耳から外し、自分の口元に近づけ
再び変声機をいじった。
「こちら風見。問題ない。私の指示があるまで待機。以上」
「……!?」
どういうことだ…何が起きている…?
風見は目の前の男が急に恐ろしくなった。
先ほどまで上司である降谷の声を出していたかと思ったら、
突然自分の声を出してあろうことか部下と話をしていた。
「実に便利な世の中ですね…」
沖矢はそう言うと風見の首に手刀を振り下ろし、黙らせることにした。