【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
「…Madeira(マデイラ)?」
タバコの煙を吐きながら男は言った。
「あぁ、先日ジョディ君が見つけた資料に
“Madeira”という筆圧の跡が見つかってね。
何か心当たりがないか、こうして連絡をした次第だ。
赤井君」
赤井はタバコを咥えたまま、夜空を仰ぎ見る。
今日は月も星もまるで見えない。
一瞬のうちに思考を巡らせてみるが、
相手を満足させられるような返事は
見つからなかった。
「私が知っているマデイラといえば、
シェリーと並ぶ世界三大フォーティファイドワインの一つ…
…そのジョディが見つけた資料のデータ
こちらに送ってもらえますか?」
「あぁ、そうしよう。何か分かったら連絡をくれ。
ところで赤井君、その変装はいつまで続けるつもりかね」
赤井は面白そうに笑うと首元に手を当てる。
__ピッ
わずかな電子音がなったその後には
全く別人の声が響いた。
「あぁ、これですか?
結構気に入っているんですよ。
“沖矢昴”という私もね…」