【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
__パンッ
古びた倉庫内に、乾いた音が響く。
放たれた弾丸は男の頬をかすめ
洋服に赤いシミをいくつか作る。
「バーボン、一体どういうつもり?」
「…ッ!!手荒な歓迎ですね…ベルモット」
錆びた鉄柱に、腕を後ろ手に繋がれ
男は身動きが取れないでいた。
ジャラジャラと、鎖の鈍い音がうるさい。
割れた窓ガラスから西日が差すと、
女の美しいプラチナブロンドの髪を輝かす。
「組織のデータベースをハッキングして…
スパイごっこは楽しかった?
それに、あんなに分かりやすく痕跡を残すなんて…
…!バーボン、まさかわざとやったわね?」
少し遅れて火薬のにおいが鼻につく。
「貴女ならこうして、僕に釘を刺しに来ると
分かっていましたからね…」
はぁ…と女はわざとらしくため息をつくと続ける。
「…アレの存在はトップシークレットよ。
どこまで調べたわけ?」
ベルモットはバーボンに向けた銃口を下ろそうとはしない。
むしろ引き金にもう一度指をかけ直し、
返答次第ではここで始末するつもりのようだ。
ただの脅しではないと、彼女の目を見れば分かる。