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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第7章 パフォーマンス





「マデイラ、君は特別な子なんだよ」


「とくべつ?」




パチパチと暖炉の中の薪がはぜる。

ガーネット色のベルベットソファーに

どっしり座った男。

その膝の上に私は抱かれていた。



「そう、世界で一番大切ということだよ」



私の頭と同じくらい大きな手で

わしわしと頭を撫でる。



「お父様にいってらっしゃいのキスをしてくれないか」

「…いやっ。キスをしたら、お父様、お仕事へ行ってしまうんだもの…」



顔をそむけると、ぽろぽろと涙がこぼれてくる。

お父様は私になんでも買い与えてくれた。

刺繍が美しいレースのドレス、

ダイヤモンドがあしらわれた髪飾り、

美味しいチョコレートに、可愛いうさぎのぬいぐるみ…



でも私は、そんなものよりお父様と一緒にいたかった。




「マデイラ、可愛い顔が台無しだよ」



胸ポケットからシルクのハンカチを取り出すと

お父様は優しく涙を拭いてくれた。



「良い子で待っていたら、今度の休みには

絵本を読んであげよう」


「えっ…!ほんとう!?」


「本当だとも。お父様がお前に嘘をついたことがあるかい?」


ふるふると首を横に振り、

私はお父様の首元に抱きついて頬にキスをする。



「お父様、いってらっしゃい」



そう言うと、お父様も私の頬にキスをしてくれた。





「…愛しているよ、マデイラ」






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