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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第33章 束の間の休息(慶次と)


『慶次の事、頼りにしてる。これからも力を貸して。』

慶次にもし愛想を尽かされて織田軍から去られたら、大きな痛手になることは、ひなにも解っていた。

慶次は口を引き結んだまま黙っている。

『頼むから、織田軍を去るなんて言わないで欲し…。』

言いながら慶次の方へ近づくと、足元の砂利に足を取られる。


『わわっ!』

『危ねぇ!』


…ずるりと滑って転びそうになったひなの肩を、慶次が しっかりと掴んだ。

『ご、ごめん…。』

あれほど憤慨していた割に、ひなの肩を掴む慶次の腕はとても優しい。

(言ってる事と やってる事が違いすぎる!)

顔を背けて赤くなった頬を隠す。


『そこは「ありがとう」でしょうよ?』


ひなの顔を覗き込み、慶次は意地悪に微笑む。

『…ありがとう。』

『ま、こういう すっとぼけた所も含めて、きっと俺は信長さまに惚れ込んでるんでしょうね。』

自分に言い聞かせるように慶次が呟く。

『それじゃ、これからも…!?』

いいかけるひなに、慶次が ずいっと顔を寄せる。


『この先いつまでも気の抜けた毬のままなら、ここを去るかどうか考えます。

ま、信長さまが俺にすがり付いて「行かないで」って言うんなら別ですけどね。』

細めた猫目が にやりと弧を描く。

(押されてちゃ駄目だ、私!)


ひなは負けじと、更に慶次に顔を寄せ、

『そう。それなら私は「信長さまの元にいたい」と膝まづいた慶次に言わせてみせるよ。』

吐息がかかる程の距離で告げた。


『…気に入った!信長さまは そうでなくちゃいけねぇ!』


さっと距離を取り、いつもの笑顔で慶次が言う。

(なんとか納得はしてくれたのかな。)

ひなは早鐘を打つ鼓動を気付かれないようにするのが精一杯で、慶次の瞳が、戸惑うように揺れたことには気付かなかった。
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