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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第33章 束の間の休息(慶次と)


(なにか話があるなんて言ってたっけ?)


考えるものの、なにも頭に浮かばない。

背を向けて歩きだす慶次に ひとまず着いて行く。

道場の前の階段を降りたところで慶次が立ち止まり、辺りを確認する。

誰も居ないのを確かめると、猫目を細めてひなのことをジロリと睨んだ。


『ここんとこの信長さまは一体どうしちまったんですか?』

『えっ、どうって?』

質問の意図が読めず、ひなは戸惑う。


『…本能寺の後の事ですよ。確かに、あの直後は さすがの信長さまも動揺してるんだと思ってました。

ところが、いくら日が経っても そのままだ。

尾張の大うつけと言われていた姿は身を潜め、今じゃすっかり気の抜けた毬みてぇだ。

そんな信長さまに着いてっていいものか、正直 迷ってる。

…あんたはホントに信長さまなのか?』


ずばり真実を言い当てられて、ぐうの音もでない。

(本当の事だから、何も言い返せない…。どうしよう。)

ふいっ、と慶次が顔を背けた。

『…っ、ごめん。』

ひなは今にも泣き出しそうな顔になる。

そりゃ、自分が目標にしてたお殿様に私みたいな一般庶民が成り代わってたら嫌にもなるよね。

でも…。

『確かに今の私は無力かもしれない。

出来れば戦も無くなればいいと思ってる。だけど…それが避けられない道なら、私は同胞を…

国の人々を守るために戦う。

その思いは誰にも、腑抜けているなんて言われる筋合いはない。』

ひなの声は、本人が思った以上に凛として辺りに響き、慶次は目を見張った。

そして、はぁ、とひとつ溜め息をつく。

『いえ…俺の方こそ申し訳ありません。…まったく、どっちの信長さまが本当の信長さまなんだか。

その目は、間違いなく以前の信長さまの目だ。』

慶次は不可解な物でも見るような顔で言った。
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