第31章 束の間の休息(光秀と)
ふっ、と笑うと光秀も花火を手に持った。
『あなたが、そう言って下さるなら。』
二人で花火に火を着ける。
パチパチパチ…。
先程よりも少し大きな音で花火が弾けた。
『花火って綺麗だけど、なんだか切ない気持ちになりますよね…。
ずーっと消えなきゃいいのに。』
ぼんやりと眩しい光を見つめながら、ひなが呟く。
『そうですね。でも…ずっと消えない光なら、私はもう知っていますから。』
『え?』
それがなにか尋ねようと光秀を見ると、光秀もひなを見つめている。
花火の、か弱い明かりに照らされた光秀の唇は『ひな』と 名前を呼んだ気がした。
光の玉は儚く地面に吸い込まれていく。
『いま、なんて…?』
聞き返すものの、光秀は素知らぬふりで、また次の花火に火を着ける。
『葉月には湖畔で花火大会を行う予定です。
戦が落ち着いて無事に開催されるとよいのですが。』
『そうなんだ!町のみんなも驚くね。うん、戦が落ち着くように願おう。』
自然に話を逸らされた気もするけれど…。
暫く花火を楽しんだ後、「片付けばやるから。」とひなは部屋に帰らされた。
襖を閉めたあとも、ほんのり残る火薬の匂いに光秀を思い、眠りにつくひなだった。