第30章 束の間の休息(家康と)
広間には、家康と三成を含む数人の家臣がいた。
今後の戦略会議が丁度 終わったところのようだった。
『おや、信長さまに政宗さま。いかがなさいましたか?』
三成が二人に気付いて声をかけると、政宗がひなに目配せする。
(えっと、私から言えってことかな?)
『みんな、暑い中お疲れ様。政宗が西瓜を切ってくれたから、みんなでどうぞ。』
ひなが そう言うと、政宗は広間の中央に、どっかと大皿を置いた。
『殿、ありがとうごさいます!』
『おぉー!これは旨そうな西瓜だ。』
『頂きまする。うん、これは甘い。』
と家臣たちが口々に感嘆の声を洩らす。
『政宗さんが切ると、ただの西瓜も旨くなるんですかね。』
家康が淡々と疑問を口にする。
ま、誉めてるってことだよね、と家康を見ていたら、パチリと目が合ってしまった。
『なにか?』
いつもの冷めた口調で訪ねられ、思わず言葉に詰まる。
『いや、えっと…台所にまだ、切った西瓜がたくさんあるんで運ぶの手伝ってくれないかな~なんて…。』
『なんだ、そんなことですか。別に構いませんけど。』
『ホント?良かった。政宗ー?って、あれっ?』
振り返ると、そこに政宗の姿はない。
『政宗さんなら、とっくに出て行きましたけど。』
(いつの間に!?)
『それじゃ、私たちも台所に…。』
慌ててひなが廊下に飛び出すと、こちらに向かって政宗が歩いて来ていた。
『あぁ、ひな…じゃねぇ、信長さま、家康、もう運び終わったから大丈夫だ。』
(嘘っ…今度は片手に大皿2枚持ってる!?
どれだけ腕力強いのっ!
『政宗さん…。あんた、どんだけ腕力強いんですか。』
隣で家康が呆れたように言う。
『あ!私も今 同じ事、考えてた。以心伝心ってやつ?』
フフっ、とひなが笑う。
ぷいっと顔をそらした家康を見て政宗も言う。
『さぁ、頭の中身が同じ者同士、縁側ででも食べろ。』
『ありがとう、政宗。行こう、家康!』