第29章 束の間の休息(政宗と)
『よし、これで最後だ。』
(ふー、疲れた。政宗ってば、こんなにたくさん切って、腕 痛くないのかな?)
『さ、広間に運ぶぞ。』
(そうだよね、そりゃ運ばないとね)と思っていたら、『えーっ…。』と声がでてしまった。
慌てて口に手を当てると政宗が笑う。
『冗談だ。男供は腐る程いる。女のお前に運ばせたりしない。』
『そ、そっか。』
さりげなく政宗に背を向ける。
(急に女扱いされると、どんな顔していいか解らないよ。)
『ほら、一緒に行くぞ。戻ってくるときに家康にでも頼めば言い。』
言いながら 政宗は、片手で1つずつ大皿を軽々と持つ。
『あ…うん。私も鍛えよう。』
少し離れてひなも着いていく。
『いいよ。お前は、そのままで。今のひなの方が好みだ。』
スタスタと歩く政宗の後ろを、真っ赤な顔で追い掛けるひなを、すれ違う家臣たちは不思議そうな顔で見ていた。