第26章 外柔内剛(がいじゅうないごう)/後編
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同じ頃。長屋の裏手で。
『慶次!』
『あん?なんだ、四郎じゃねぇか。良かった、お前無事だったんだな。』
四郎と呼ばれた小さな子供が、涙目で慶次に懺悔した。
『ごめん、ごめんよ!』
『なんだよ、いきなり。どうしたんだ?』
慶次に即されて、先程あったことを話す。
『なんだって!?信長さまが この中にいるのか?
解った。よく話してくれたな。だーいじょうぶだ!心配すんな。
天下の織田信長だそ?うちのお殿様は、そんなに柔じゃねーよ。』
四郎の頭をくしゃりと撫でて、慶次は、まだ燻っている長屋の裏手から足を踏み入れた。
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バキッ!
『信長さま!』
壊れた扉を蹴破って現れたのは慶次だった。
『慶次…。』
ガキッ!
慶次が振るった短槍を、後ろ手に元就が刀の鞘で受け止める。
『貴様は差しの勝負に顔出すのが好きみてぇだな。』
そのまま槍を弾き返す。
『お殿様、今日は邪魔が入った。また、いずれ…必ず。』
『あっ、待ちやがれ!』
元就を追い掛けようとした慶次だったが、ひなを見て足を止める。
『信長さま?怪我してるんですか?』
信長の前にしゃがんで見ると、着物が半分 胸の辺りまではだけていた。
『おわっ!?』
慌てて自分の羽織を脱ぎ、ひなの体を覆うようにそっと着せる。
『信長さま、立てますか?』
目を反らしながら、ゆっくりとひなを立たせる。
『ありがとう、慶次。大丈夫、一人で歩けるよ。早くここを出なきゃ。』
はい、と頷くと、信長の手を取り外へ向かう。