第26章 外柔内剛(がいじゅうないごう)/後編
『信長といやぁ、剣の腕前も相当だと聞く。何故 切り返してこない!』
『わ、私はっ…あなたと…いいえ、誰とも…戦いたくありません!』
息も絶え絶えに、ひなが答える。
『今さらなに温いこと言ってやかる。今までの貴様は、大義のため、大義のためと、何人もの命を奪って来ただろうが!
天下人になって日ノ本の頂点に立った後はどうする?
次は民を奴隷にして外国でも滅ぼすか?
そんな悲劇が起こる前に、この国は俺がこの手で派手にぶっ壊してやるよ。』
そうだ、こんな世の中、何もかも壊しちまった方がいい。
一瞬、回りに配っていた気が途切れた。
『危ない!』
ひなが叫び声と共に元就を突き飛ばす。
ガラガラガラ…
『いってぇ!なにしやがるんだ、きさ…ま。』
燃え残っていた柱が、形を保つ限界を超え崩れた。
『うぅっ…。』
その下敷きになり、ひなが うつ伏せに倒れている。
元就は無意識にその柱を持ち上げ払い除けた。
『大丈夫か!』
いや…なんで俺は信長を助けてる?
柱が当たっていたひなの肩は、着物が焦げて火傷を負っているようだ。
迷ってる場合じゃねぇか…。
元就は他の部屋から水桶を探して持ってくると、ざばっとひなの肩にかけた。
『ひゃっ!?冷たい!』
ひなが思わず起き上がる。
『ちょっと我慢してろ。』
はめていた手袋を外すと、元就がためらいがちに、ゆっくりとひなの着物を剥ぐ。
『火傷はそこまで酷く無さそうだな。』
そう言いながら水で濡らした手拭いをひなの肩に乗せる。
…変だな。他人に触れると吐き気がするのに、こいつは何ともねぇ。
むしろ、もっとこの白い肌に触れていたい…。誘われるようにひなの頬に触れた。
『元就…さんは、お怪我ありませんか?』
苦痛に顔を歪めながらも、ひなが元就を気にかける。
『他人の心配してる場合かよ。』