第26章 外柔内剛(がいじゅうないごう)/後編
すーっ、と思い切り息を吸うと、
『毛利元就ー!!』
ひなが精一杯の大声で叫ぶ。
… … …
『あ?』
塀の上で誰か叫んでやがる。元就が目を凝らして見る。
『杉大方(すぎのおおかた)様…?』
そんなわけねぇ、あのお方はとっくに亡くなった。よく見ると確かに似てはいるが別人だ。
それじゃ、誰なんだ?あいつは…。
… … …
もう一度息を吸って一息に叫ぶ。
『私が織田信長だーっ!遠くから攻撃するしか出来ない腰抜けめー!』
(うぅっ、言っちゃった!!こんなことしても砲撃が止まなかったら踏んだり蹴ったりだな。
もう、その時はその時だ。)
… … …
『織田信長だと!?ふざけろ!クソッタレがぁっ!』
元就は怒りを隠そうともせず、腰の刀を抜いた。
『頭っ!?』
『お前らはついてくるんじゃねぇ!大砲も終いだ。
面白えなぁ、さすが尾張の大うつけ。差しでやりあおうじゃねぇか。』
ゆっくりと信長めがけて歩き出す。
… … …
(よかった!とりあえず砲撃がやんだ。
ん?…ぎゃーっ!凄い形相で元就が こっちに歩いて来る!ど、どうしよう…。)
ひなが後退りすると、
『信長さま、お任せを!』
後から大きな声がして顔の横を掠めて長槍が飛んだ。
グサッ!
歩み寄る元就の眼前に突き刺さる。
『ちっ、差しの勝負に邪魔が入ったか。まぁ、いい。一応 当初の予定通りだ。
…信長、首洗って待ってろよ。』
元就はくるりと身を翻し去っていく。
『よし、次の作戦だ。町に火を放て!』
『へいっ!』
元就達は森の中へ消えていった。