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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第25章 懸崖撒手(けんがいさっしゅ)/後編


(良かった…。なんとか信じてくれたみたい。

今度 佐助くんに会ったら、たっぷりお礼 言わなくちゃ。)

安堵のため息を洩らし、ひなも政宗達の所に戻ろうと後を向いた時、

目の端で、何かがキラリと光った。



ズガァァァン!



(えっ!?銃声?)

馬が嘶(いなな)き竿立ちになり、目の前の謙信目掛けて走り出す。


(危ない!)


ひなは無意識に馬の手綱に手を掛けた。

もちろん馬の力に叶うはずもなく、ズルズルと引き摺られる。


しかし勢いは弱まったのか謙信には、ぶつからなかったようだ。


『貴様…何をしている!?』

驚いた顔で謙信がひなの元に駆け寄る。

『すみません、今の音に驚いて私の馬が…危うく謙信さまを蹴り倒す所でした。』

申し訳なさそうに笑う、ひなの手を手綱から そっと外す。

勢い良く走る馬の手綱を掴んだその右手は、血だらけだった。


『…血は苦手なのだろう?』

『えっ?』


びりびりと謙信が自分の着物を破く。ひなの掌にそっと当てると包帯替わりに巻き付けた。

『謙信さま!?』

『貴様が馬など止めなくとも、俺は自分の身くらい守れる。敵相手に何故こんな無茶なことを。』

謙信が呆れた顔でひなに言った。すると当たり前のようにひなが言う。


『だって…謙信さまも守ってくれたじゃないですか。

何の関係も無い私の事。』

『!!』

『勝手に体が動いていました。あの時の謙信さまも…ですよね?私達、戦わない道もあると思いませんか?』

にっこりと微笑むひなに謙信が淡々と告げる。

『いや、今は無いな。』

『そんなー!』


ショックを受けるひなを無視して横抱きに抱えると、近くの岩の後に滑り込んだ。

『きゃっ!なにするんですか!』


ズガーン!ズガーン!


数発の銃声と岩の砕ける音が、こだまする。

(嘘っ!元就の軍が もうそんな近くにいたの!?)


『佐助!我らも鉄砲隊で迎え撃て!』
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