第2章 私は信長
『あ、はい…。』
ひなが小声で呟く。
『…行くぞ、政宗。ハッ!』
秀吉は勢い良く馬の腹を蹴って走りだす。
政宗の馬も、それを追う。
ひなは、身体的なのか精神的な疲れなのか、気付けば秀吉に体を預けて眠りに落ちていた。
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『信長さま、安土城に到着致しました。』
どれくらい時間がたった頃だろう。
ぐっすり眠ってしまったひなを、秀吉の柔らかい声が現実に引き戻す。
『んー…あっ!ごめんなさい、乗り心地が良くて つい…。』
慌てて顔を上げると鼻がぶつかる程の距離に驚く。
わっ!
慌ててひなは顔を背けた。
何事も無かったように秀吉は先に馬を降り、ひなが降りるのを手伝う。
『信長さま!』
「安土城」と案内されたお城から、こちらに数人の人影が向かってくる。
(今度は誰ー!!)
『道中ご無事で何よりでございます。』
(色気のある男の人だな…。)
『信長さま、お怪我はございませんか?』
(この人は心配してくれてるようだけど愛想が無い。)
『三成、信長さまは、かなりお疲れのようだ。床の支度を頼む。家康は軽く診察をして差し上げろ。』
『『はっ。』』
と2人が短く返事をして別の方向へ去っていく。
(今までの少ない戦国時代経験からいくと、色気のある男の人が石田三成、もう1人は徳川家康かな…。)
顎に手を当てて考えていると、急にその手を掴まれた。
『信長さま!ごめんなさい、俺…怖くて逃げてしまいました!』
泣きそうな顔の少年が立っていた。