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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第25章 懸崖撒手(けんがいさっしゅ)/後編


(ここは謙信目線にて進みます。)

… … …

『ん?おいっ、あれを見ろ!馬が一騎 近づいてくるぞ!』

謙信軍の先陣にいた兵が叫ぶ。

『構えろ!』


『…何事だ。』

謙信が後から ふらりと前に出る。

『謙信さま、馬が一騎 真っ直ぐこちらに向かってきます!』

『一騎だと?』

兵が指差す先には、確かにこちらに近づく馬が見える。

『乗り手が随分と小柄だな。』

馬は少し手前で歩を止めた。


『上杉謙信公に お話があります!』


馬上から声がする。

ん?女子(おなご)か。何故こんなところに女子がいるのだ?くのいちでも無さそうだが…。


『俺が上杉謙信だ。貴様は何者だ?』


馬上の人影は馬から降りると、たどたどしく語りだした。


『私は…私の名は…織田…信長。』

次の瞬間、謙信の馬は人影目掛けて走り出した。


信長自らやってきただと?


信長と名乗る人影の前で、謙信も馬を止め飛び降りた。

『うつけという話は真実のようだな。自ら俺に、その首を献上しに来たか?』

謙信はすらりと刀を抜き構える。だが、その人影は微動だにしない。


『私は、あなた方と戦いに来たわけではありません。

我々は今、毛利元就の軍勢に城を攻められています。

そして元就の別動隊が、すぐそこまで迫っている。

別動隊は、私達が仕掛けたと見せかけて、あなた方へ大砲を撃ち込もうという算段です。

このまま進軍すれば、それに巻き込まれて大勢の命が失われるかもしれません。

どうか一時、休戦を!』

必死に訴える顔を改めて見て謙信は気付いた。


『貴様…あの時 襲われていた女か?』


思い出したぞ、この声。

何処かで聞き覚えがあると思ったが、安土の町中で襲われそうになったのを助けた女ではないか?

俺にすがりついて震えていた女が信長だっただと?

俄(にわか)には信じがたい現実に、謙信は目を見開いた
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