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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第24章 外柔内剛(がいじゅうないごう)/前編


家康とひなは暫く無言で睨みあっていたが、慶次が助け船を出す。


『信長さま、家康。今はいがみ合ってるてる場合じゃねぇだろ。』


『…そうだね。すまない、慶次。』

家康が、掴んでいたひなの腕を離す。


久兵衛に連れて行かれながら、蘭丸が振り向いて それを見つめていた。


『さ、信長さまは奥の間へ。俺は城を守っている兵を加勢に行きます。

家康は信長さまの側にいてくれ。』

言うが早いか、慶次は飛び出した。


『信長さま、こっちです。』


早足で家康が先を行く。後ろ髪を引かれる思いでひなも従った。

ずんずんと無言で歩き続ける。


(家康、怒ってるよね…。)


考えてみれば、間者とは敵のスパイだ。

情をかけるなんて、この乱世ではあり得ないことだろう。

だけど…。簡単に「はい、そうですか」とは言えなかった。

俯いて着いて行きながらそんな事を考えていると、突然 家康が足を止める。

ひなは、その背中に勢い余ってぶつかった。

『痛ーっ!もう、止まるなら止まるって言ってよ!』

(あ、私ってば、またキツイ言い方を…。)

『しっ!静かに…。』

『何?』

尋ねるのと同時に、家康がひなを抱き締め その全身で庇った。



ドォォォォォォン!!



その転瞬(てんしゅん)、聞き覚えのある音が耳に飛び込んできた。


『キャー!』


思わずひなが叫ぶ。パラパラと壁や天井が崩れ落ちてゆく。


『信長さま、お怪我は…?』

顔を歪めて家康が言う。

『家康!?』

慌てて体を離すと、飛び散った木片が家康の腕や背中に突き刺さっていた。

『俺は大丈夫です。見た目ほど深くありません。』

『ううん。…家康は ここに居て。』

ひなは、おもむろに立ち上がり歩き出した。


『何処へ…痛っ…。』



~~~


小走りになりながら、先日の森が見える高い場所まで行く。

(やっぱりいた!)

森の一角に大砲、そして隣には…あの銀髪が見える。


この間より距離が近い。


ひなにも、はっきりと浅黒い肌の男が見えた。

(あれが、謀略王、毛利元就か…。)


<後半へ続く…。>
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