第24章 外柔内剛(がいじゅうないごう)/前編
「パシッ!」
一瞬、何が起きたのか解らない、という顔の蘭丸だったが、
ひなに頬を叩かれたのだと気付く。
目をぱちくりさせている蘭丸にひなは言った。
『蘭丸は大人だから別に何処へ行こうが構わない。
だけど、何処へ行くか、いつ戻るかぐらい伝えてから出て行って!
…急にいなくなると、心配するでしょ!』
そして蘭丸を、ぎゅっと抱き締めた。
『の、信長さま!?ごめん…なさい。』
蘭丸が そっとひなを抱き締め返した。
ひなは、はっ!と我に返る。
『わわっ!こっちこそごめん!急に抱き付いたりして…。』
慌てて腕を解いたものの慌てふためいている。
すると、横から盛大な溜め息が聞こえた。
『はぁー。信長さま、仲良しこよしのとこ申し訳ないんですけど、荷物、ばら蒔いてます。』
足元を見ると薬や包帯が大暴れしたように散らかっている。
(あ、蘭丸を抱き締めた時に放り投げちゃった…。)
『さっさと拾いますよ。』
家康は持っている荷物を脇に置き、ひなが散らかした荷物を拾い出す。
『わー!ごめん!家康は拾わなくていいよ。私が…。』
『いいえ、俺のせいです!俺が拾います!』
『だから押さないで…。』
わあわあと三人が騒ぐ様子を遠くで光秀が眺めていた。
『なんだ?いつからここは寺小屋になった?
ちっこいのが集まって、ちょこまかと何をやってるんだか。』
クックッと笑いながら光秀が三人の方へ歩いていく。