第21章 上下一心(しょうかいっしん)
途端に、その場にいる者達がざわめきだす。
『武田信玄と上杉謙信の軍が…同時に?』
(二人が、手を結んだってこと!?)
『それぞれ一万…。動かせる兵力の半分を率いてるってぇことは、本気で潰しに来るってことか。上等だ!』
政宗がニヤリと口の端を上げて笑う。
(政宗みたいに笑う余裕は無いけど…。)
『報告、感謝します。城のみんなにも急いで伝えて。
それから出来る限りの兵を集めておいて下さい。
あ、あと、武将達は広間に!』
『はっ!』
光秀は小さく頷くと、素早く出ていった。
暫く後…。
ひなは高座に座っていた。隣に本家・信長の姿は無い。
(何処に行っちゃったんだろ…。)
広間に集まった武将達の表情は険しい。この間よりも空気がビリビリしてる。
一呼吸置いて、ひなが話し出す。
『みんな聞いてると思うけど、武田信玄と上杉謙信の軍が国境から、ここ安土へ進軍しています。
早ければ明後日の朝には、この近江に辿り着くかもしれません。なんとしても、その前に食い止めなければ…。』
それを受けて、すぐ前に控えている秀吉が三成に問う。
『三成、お前の策を。』
『はい。我々は「魚鱗(ぎょりん)の陣」で迎え撃つ所存です。
織田軍配下のこの土地は、山や川に囲まれた複雑な地形です。
おおよそ2万の兵を率いて来るとなれば、敵も戦力を散らさなければ攻め入るのは難しいでしょう。
それに我が軍は現在、地方での合戦に多くの兵が出向いている為、少数精鋭で迎え撃つ事になるかと思われます。
ですので、個々の部隊が動きやすく前方からの攻撃に強い、この陣形で挑むべきかと考えます。』
いつものほんわかした雰囲気を一切感じない、武将としての三成の姿が、ひなには頼もしかった。
『こちら側が出せる兵の数は、どれくらい?』
三成に訪ねる。
『…かき集めたとして、八千といったところです。』
『半分以下なんだ…。』