第21章 上下一心(しょうかいっしん)
『だいぶ すっきりしたな。』
眩しい日の光を、額に当てた掌で遮りながら天守を仰ぎ見る。
砲撃から一週間。
多くの家臣が、砲撃で破壊された部分の片付けにあたっていた。
ひなも手伝うと言ったのだか、滅相もないと断られてしまった。
(当たり前か、彼らにしてみたら私は偉いお殿様だもんね。)
『もう昼だよー。食事を用意したから、みんな少し休んで!』
階下から、ひなが声をかける。
広間には人数分の暖かい料理が所狭しと並べられていた。
『ありがとう、政宗。政宗も忙しいのに無理を言って。』
『信長さま たっての願いとあれば喜んで。
それに、三成はああ見えて便りになる武将ですから。』
うん、とひなも頷く。
三成は、城の守りを固めるため家臣たちと奔走してくれている。
家康は、負傷者が出た時のために、薬や必要になるであろう物資をかき集めてくれている。
(私には、何が出来るかな…。)
『信長さま!』
思いを巡らせていると、息を切らせて光秀がひなの元へやってきた。
(珍しいな、光秀さんがこんなに慌ててるなんて。)
『光秀さん、どうしたんですか?』
自らを落ち着かせるように、光秀がひとつ息を吐く。
『信長さま、一刻を争う事態ゆえ、この場でのご報告お許しください。』
『構わない。話して。』
『私の放った斥候が、国境に多数の敵兵を確認致しました。
視認出来たのは二種類の旗印…。
ひとつは風林火山、そしてもうひとつは毘沙門天。
甲斐の虎と越後の龍が、それぞれおよそ一万の兵を率いて進軍中とのこと。
早ければ明後日の朝には、こちらへ到達するかと思われます。』