第20章 熟慮断行(じゅくりょだんこう)
『スーパー…セル?』
耳慣れない言葉に思わず聞き返す。
(えっと…お店の大売り出しって意味じゃ…無いよね。)
ひなは脳内で自分に突っ込みを入れる。
『…自分で突っ込み入れてるみたいだから、あえてスルーしておく。
スーパーセルっていうのは簡単に言うと…物凄く激しい竜巻のこと。
磁場が狂って時空が歪み、異なる世界との扉が開いたんだと思う。』
『そうなんだ。本当に映画みたいな話だね。それが今から二ヶ月後に…?』
『ああ。そして、その中心部にいれば…帰れるはずだ。』
ガサガサと佐助が胸元から地図を取り出す。
『俺が予測したのは、北緯◯◯.◯◯…東経◯◯、◯◯…』
佐助がブツブツと数字を呟きながら地図の上をなぞる。
指が「トン」とある場所を指した。
『ここ。丁度、本能寺の辺り。』
本能寺って、このあいだ燃やされたお寺?
『詳しい時間が解ったら、また知らせに来る。
ひなさんは、なるべく強い武将と一緒にいて…って、ひなさんが強い武将なのか。
うーん、ややこしいな。とにかく誰かと一緒に行動して。
それにしても、6月だっていうのに この部屋は肌寒いね。
よく風が通る作りになってるのかな、悪寒が…。
夏風邪引かないように気を付けて。それじゃ。』
そしてまた音もなく、佐助は天井裏に消えた。
(あと2ヶ月…でも間違いなく、その前に戦が始まる。
いつまでも泣いて縮こまってちゃ駄目だ。)
『しっかりしろ、私!』
ひなは自分の頭を げんこつで叩く。