第20章 熟慮断行(じゅくりょだんこう)
『あはは…私は、まだ日が浅くて鍛えられてないから…。』
ひなの目から堪えきれずに涙が溢れた。
『今日、目の前で人が死ぬのを見たの…人を殺すことを何とも思って無いような人達がいて、戦争なんか当たり前で…。
戦国時代って、やっぱりおかしいよ!
…信長なんていなきゃ良かったのに!』
佐助は涙を受け止めるように、両手でひなの頬を包む。
『俺も当初はそう考えてた。
だけど、ある武将にお世話になって、それぞれに譲れない思いや義があること、
その為に命を掛けて生きてるんだってことに気付いてから少し考え方が変わった。
確かに人を殺める事を よしとした訳じゃないけど。』
真っ直ぐにひなの目を見て言う。
(佐助くんは大人だ。年はあんまり変わらないのに、私はなんてガキっぽいこと言って泣いてるんだろう。)
『いきなり泣いちゃって、ごめん。』
『いや、俺は ひなさんの涙なら、いくらでも受け止める。
あっ!俺の方こそ、ごめん。勝手に触れたりして。』
佐助が慌てて、ひなの顔から手を離す。コホン、と咳払いすると真面目な顔で話し出した。
『ところで、この間言ってた事なんだけど、近いうちに現代に帰れるかもしれない。』
『えっ!?』
『前に俺達がこの時代に飛ばされたのは天候が関係してるんじゃないか?って言ったの、覚えてる?』
『うん。』
『俺はこの時代に来てから気象の勉強をしてたんだけど、激しい嵐…「スーパーセル」が、今からおよそ二ヶ月後に起きるっていう予測がたったんだ。』