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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第20章 熟慮断行(じゅくりょだんこう)


天守が崩れているため、ひなは階下の広間で過ごすことにした。

『本当にこちらでよろしいのですか?信長さま。』

『うん、ここがいいの。』

『しかし…。』


秀吉が言いたいことは良く解る。

今、ひなが居るのは砲撃された天守のすぐ階下だ。

『もし、天守の残っている部分が崩れ落ちでもしたら…。』

ひなは微笑んで明るく答える。

『大丈夫!危ないと思ったら、すぐ秀吉さんに助けを求めるよ。』


天守が崩れているからと言って政務も怠れない為、秀吉には更に下の階に常駐して貰うことになったのだ。

『それに、ここにいた方が修復の様子もよく解るし、ね。』

秀吉をしぶしぶ納得させ部屋から出す。



襖が閉まるのを見届けると、ひなの顔から笑みが消えた。

力なく、膝を抱えて部屋の角にしゃがみこむ。

『間近で見るとホントに木っ端微塵って感じ。』

金の屏風絵も柱も、無惨に焼け焦げている。

天守には、ひなが現代から持ってきたバックも隠していた。

さすがに この状態を見ると諦めざるを得ない。


『あーあ、お気に入りだったのになぁ。』

『良かった。丸焼きになる覚悟で飛び込んだのが報われる。』

(この声…佐助くん!?)

『どろん。』

顔をあげると、天井の板を外して逆さまに佐助が顔を出していた。

音もなく飛び降りると、ひなの目の前にバックを差し出す。

『ごめん、最初の砲撃に間に合わなくて少し焦げ跡が出来てしまった。』

そう言う佐助は、服が所々焦げている。

『佐助くん、腕、火傷してる!』

ひなは、飲み水として用意してあった椀で手拭いを濡らすと、そっと佐助の腕に当てた。

うっ、と佐助が小さく声をあげる。

『痛いよね、ごめん。でも冷やさないと…。ちょっとだけ我慢して。』

佐助が、ふっと笑う。

『ひなさんの方が泣きそうな顔をしてる。俺は大丈夫。

君の心ほど痛くない。戦国ライフ歴は それなりに長いから鍛えられた。』
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