第19章 宣戦布告
『みんな、顔を上げて。』
武将達が一斉にひなの顔を見る。
『みんなも知っている通り、今しがた、ここ安土城の天守が何者かによって攻撃されました。
怪我人がいなかったことは幸いですが…天守は半分ほど吹き飛んでいます。
私が確認したところによると、あれは多分、大砲でしょう。
城下の森の中に隠してあったものと思われます。』
(ええっと…こんな感じでいいのかな?)
ひながチラリと隣を見る。
右隣には、本家・信長がひなと同じように高座に座っている。
腕を組み胡座をかいた姿は、正座をして膝の上に両手を揃えているひなとは大違いだが。
なにも言わないということは大丈夫なんだろうと取る。
『そして、その大砲の横に…死人(しびと)を見ました。』
ざわざわと広間が色めき立つ。
『先日の戦で亡くなったと伝えられていた男…。
名は毛利元就、謀略王と言われた安芸の国の将軍です。』
『冗談でしょ。幽霊じゃあるまいし。』
家康が淡々と突っ込むが、ひなの顔色は変わらない。
それを見て広間は静まり返った。
『それについて、私の斥候から情報が入っております。お伝えしても宜しいでしょうか?』
光秀が一歩前に進み出て言う。
うん、とひなが頷く。
『信長さまの仰ることに相違無いかと。
まずは、本能寺の変の一件から。関与している者の名が解りました。
本願寺派の僧侶、顕如と申す者です。』
「顕如だと?あいつも死にぞこなったか。」
本家・信長が呟く。
『そうして、その顕如が手を組んでいる相手こそ、死んだとされている毛利元就です。
他に、商館を取り仕切っている帰蝶という男も絡んでいる様子。これは慶次が同じ商館に潜り込んで得た情報です。』
ちらりと光秀が慶次を見やる。慶次が力強く頷いた。
『毛利元就は、阿蘭陀(オランダ)や英吉利斯(イギリス)といった国から大量の武器・弾薬を仕入れております。
先程の砲撃も、自分達の力を誇示する為…我等への宣戦布告かと。』