第19章 宣戦布告
その側にはいくつかの人影があり、中央には遠目にもよく解る銀髪をなびかせて、誰かが立っていた。
もっと良く見ようとひなが目を細めた時、派手な柄の着物が視界を遮るように舞った。
(…慶次!?)
『信長さま、俺の足なら まだ追い付けます!』
そう言って斜面を掛け降りようとする背中に、ひなが叫ぶ。
『追うな慶次!!』
ひな自身でも驚く程の大きな声に、慶次の足がピタリと止まった。
『追っては駄目!罠だよ。』
篝火(かがりび)を焚いているのか森の四方が微かに明るい。
『今一人で突っ込んでも、待ち伏せしてる奴らに いいようにやられるだけ。』
『…でもっ!』
ふるふると首をふり、ひなは視線を眼下に戻す。
(…え?今、目があった?まさかね。こんな遠く見えるわけ無い。)
なのにどうしてか、銀髪の誰かは笑っていたような気がした。
『信長さまっ!お怪我はありませんか!?』
背後から声を掛けたのは、青い顔をした秀吉だった。
すぐ後に政宗もいる。
『二人も無事なんだね、良かった!』
(あ、私が城を抜け出したこと、バレたな。どう言い訳しよう…。)
ひなが考えていると、政宗が吐き捨てるように言う。
『くそっ、どうなってやがんだ!?砲撃なんて誰が!』
『まったくだ。信長さまが いつものように城を抜け出して天守にいなかったから良いようなものを!』
(…いつも抜け出してたんだ。つまり、城のみんなは見て見ぬふりをしていた、と。
どおりで簡単に出たり入ったり出来たわけね。あんなにドキドキしてた私って。)
はぁ、と ひなが小さく溜め息をつく。