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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第62章 譎詭変幻(けっきへんげん)


『流石にお前は聡いな。だが、その通り。

見るからに二日酔いのところ悪いが、信長さまがお呼びだ。

なるべく早く身支度を整えて広間に来い。』

政宗の顔から笑顔が消え、ひなも真顔になる。

『解った。急いで行くよ。』

『ああ。その後で上手い味噌汁食わせてやるから、期待してろ、じゃあな。』

そう言うと政宗は廊下を歩き去った。

(よし、何事か解らないけど兎に角…。)

未だ はだけた着物に一人、顔を赤くする。

『着替えよう。』

えいっ!と立ち上がり、ひなは寝間着を脱ぎ捨てた。




ひなが広間に着くと、既に武将たちが集まり坐(ざ)している。

『お、やっと来たか。』

ひなに気付いた政宗に手招きされ、側に座る。

『…あのままの格好でも良かったけどな。』

そっと囁かれ、再び顔に引き戻されそうになる熱を抑えるのに必死だった。



『みな、集まっているな。』

少しして信長が広間に現れ、その良く通る声が空気を引き締める。

『集まってもらったのは他でもない。近頃、日ノ本各地で、おかしな事件が起きているらしい。』

『おかしな?ひなの事よりもですかい?』

慶次が、おどけながら尋ねる。

『そうだ。だが、もしかすると何か関係があるかもしれん。

だから、ひなもここへ呼んだ。』

(私が…関係?)

『こら、慶次。信長さまの言葉を遮るな。』

目を見開くひなを横目に、秀吉が渋い顔で慶次をしかりつける。

『構わん。光秀、貴様が仕入れた情報を皆にも話せ。』

『はっ。』

部屋の隅に座っていた光秀が、短く返事をして前に出る。

『俺の放った間者の情報によると、ここ最近、各地で亡霊が暴れ回っているらしい。』

『亡霊?信玄や謙信のことですか?』

家康の問いに、光秀が首を横に振る。

『いいや。あいつらが生きている事は周知の事実。大抵の輩は驚きもすまい。』
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