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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第59章 傾国美女(けいこくのびじょ)


花が綻ぶように市が笑う。

『え?』

(なんの事だろう。)

ひなが首を傾げていると、顎に手を当て市が唸っている。

『男共の無駄な争いに飛び込む高潔さ、見習わなければ。』

冷めた目で、市が信長と長政を見る。

『市さん、眼力…凄いです。』

『うっ…、すまん。』

長政が小さくなり、心なしか信長も大人しくなったようだ。

『ふふっ、冗談です。私を思っての事だと重々、承知しておりますから。

それにしても、こんなに可愛い妹が出来て、とても鼻が高いわ。ね、あなた!』

『ああ!国に戻ったら早速、自慢しなければ。

あー、しかし、そんなことをしたら皆が羨ましがって、こぞって安土に会いに行くと言いかねんな。』

長政は真剣な顔で思案している。

(ええーっ!?)

『いや、褒め過ぎですって…。』

(そんなキラキラした目で言われると、自分の普通さが いたたまれないっ。

どっちかっていうと、こぞって誰もが会いに来たがるのは市さんの方ですから!!)

ひなが恥ずかしさに目を白黒させていると、威勢のいい政宗の声が聞こえてきた。


『待たせたな、煮しめも出来上がったぜ。さあ皆、温かいうちに食ってくれ。』

食欲をそそる煮しめの香りが広間一杯に広がる。その場にいた者たちから、わあっと歓声が上がる。

『貴様らも、遠慮せずに食べろ。長政、酌をしてくれ。』

『喜んで。』

信長の手招きに長政は立ち上がり、笑顔で酒を酌み交わし始めた。


『ひなさん。さ、私達も。』

そう言うと、市はひなの持つ盃に新しい酒を注ぐ。

『こうして無事に会えたことに感謝して。』

『はい!』

ひなは、市に即され、満面の笑みを浮かべながら盃を傾けた。




※傾国美女(けいこくのびじょ)~「傾国」は国を傾け滅ぼすこと。つまりは君主等の権力者が、国の政(まつりごと)をないがしろにするほど心を引かれる美女のこと。
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