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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第59章 傾国美女(けいこくのびじょ)


『はっ、神出鬼没なお狐さまの手は煩わさねぇって。

ひな、俺こそ、いつ何時(なんどき)でも呼んでいいからな。じゃあな。』

ひなの手を取り、何度も念を押してから、慶次も台所を出て行った。


『冬なのに暑苦しいな、あいつら。』

政宗が憎まれ口を叩く。

『ふふっ、なんだかんだいいながら、二人も政宗の料理が楽しみなんだろうね。』

『…。ひな、今のところ手は足りてるから、お前も部屋に戻ってていいぞ。ありがとな。』

『解った。それこそ何かあったら呼んでね。手伝うから。』

『ああ。』

『それじゃ。』そう言って部屋へと帰って行く ひなの背中に、政宗が呟いた。

『あいつの鈍感さは、来年も変わりそうにないな。』




それから。


あっと言う間に時は過ぎ…。

新しい年が明けた。

今日は元日。数日前から降り続く雪が、しんしんと積もる中、

城の中は明るい笑い声や、賑やかな話し声で溢れていた。


『信長さま、御慶(ぎょけい)申し入れます。』

武将達が、こぞって信長に挨拶を述べる。

『堅っ苦しい挨拶はいい。各々、食うも良し、飲むも寝るも良し、好きに過ごせ。』

信長が盃を掲げて皆に告げ、祝宴は和やかに始まった。

そんな中、ひなは落ち着かない様子で廊下をウロウロしている。それに気付いた三成が声を掛けた。

『ひなさま、どうなさいました?』

『えっ!?あ、三成くん。』

気まずそうな顔で、ひなが返事をする。

『廊下は冷えます。兎に角、中に入りましょう。』

『…うん。』

三成に手を引かれ広間に入るが、やはり視線が定まらない。


『ひな、側に来い。』

それに気付いたのか、信長が呼び掛けた。

『あ、はい…。』

おずおずと信長の側に近付き、即されるまま目の前に座る。

『まあ飲め。正月早々そんな顔をするな。皆が心配する。』

信長は、ひなに持たせた盃に並々と酒を注いだ。

『そんな顔?わっ、頂戴します。』

慌てて口を着けるのを確かめて、更に信長が告げた。

『何を構えている。義兄夫婦が訪ねてくるというだけだろう。』
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