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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第58章 殊塗同帰(しゅとどうき)


(なんだか…物寂しい。)

ゆっくりと歩み寄り、傍らに腰を下ろす。



そっと顔を覗き込むが…。

(顔色も、まだ良くないみたい。)

肌は青白く、辛うじて上下する腹部で、息があることが解るくらいだ。

(やっぱり、血を分けただけじゃ駄目だったのかな。)



〜〜〜

『やれることはやった。あとは、この人の運と回復力にかけるしかない。』

〜〜〜

(家康が力を尽くしてくれたんだもの。きっと助かる!

帰蝶さんの強さを、今は信じよう。)

『帰蝶さん。私は、あなたの強さを信じます。体も…心も。

そうまでして何故、争いの耐えない世の中にしたいのか、その意味は解りません。

でも、あなたは優しい人だと思っています。

(今までといい、今回の事といい、あなたは私を本気で葬り去ろうとはしなかった。)


商館で対峙した時だって…。


〜〜〜


『和睦など糞食らえだ。終わらせない…この乱世を続けるのだ。』

何かをブツブツ言いながら窓に近付き、また銃を打った。


ズガーーーン!!


一瞬の出来事に 誰も反応出来ない。ひなの左肩が後ろに吹き飛ばされる。

その勢いのまま、背中でテーブルをなぎ倒した。

『帰蝶め…やってくれる。』


〜〜〜

牢で密会した時だって、そう。

〜〜〜


『そろそろ逃げた方がいいぞ。俺の斥候が牢に火を放った。ここも直(じき)火の海になるだろう。

兎の丸焼きが出来上がる前に逃げろ。』

(兎…って私のこと!?)

『それとも、俺と一緒に来るか?』


〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜


(あの距離なら、あなたは簡単に私の心臓を撃ち抜けたはず。

冷酷な人なら、自分の代わりに牢に閉じ込めて焼き殺せた。

だけど、そうしなかったのは、あなたの心に優しさがあるからじゃないんですか?)

そこまで考えて、ふと納得した。

『ううん、そうだったらいいなっていう私の願望だ。』
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