第1章 嵐の中へ
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雨脚は どんどん強くなり、ひなは動けずにいた。
(困ったな。スマホが無いんじゃ連絡出来ないし、今 移動すると着物が濡れちゃうし。)
途方に暮れていると、水溜りを駆ける足音が近づいてくる。
『あぁ、会えて良かった。これ、君の忘れ物では?』
佐助がひなにスマホを手渡す。
『あ、佐助さん!?そうです!…追い掛けて下さったんですね、ありがとうございます!』
頭を下げながらスマホを受け取る。
『あと、これも。』
と、佐助がさしていた傘を差し出す。
『いえ!そんなことしたら佐助さんが濡れます!
私は雨がやむまで、ここで待ちますから。』
『俺は店に帰れば着替えられるから大丈夫。
君はこの後も散策するんだろう?』
二人で、『どうぞ、どうぞ。』と押し問答していた時だった。
ピカッ!!
空の一点が光り、傘の石突きに激しい稲光が落ちた。
『危ない!』
その瞬間まわりの景色が ぐにゃりと歪む。
『きゃあぁぁっっっ…。』