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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第57章 劉寛温恕(りゅうかんおんじょ)


『大丈夫か?』

クククッと笑う声がする。

『流鏑馬(やぶさめ)の馬が駆けてきたのかと思ったぞ。』

『政宗?三成くんも!お帰りなさい。』

『ひなさま、ただいま戻りました。…というか、起きてよろしいのですか?』

三成が心配そうに言った。

(あ、そうか。解毒剤が見つかったこと、城にいなかった皆は知らないんだっけ。)

『うん。心配してくれて、ありがとう。実は解毒剤が見つかって、すっかり元気になったんだ。』

『解毒剤!?』

二人が同時に呟く。

(ん?私、なにかおかしなこと言った?)


『解毒剤は信頼する者に預けたと帰蝶さまが…。』

三成が、ぽかんと口を開けている。政宗は、顎に手を当てて何やらニヤニヤしている。

『てっきり、あいつの家臣に預けたんだとばかり思っていた。

ところで、その解毒剤はまだ残ってるか?』

『うーん、どうなんだろう。私は解毒剤を飲まされた事も覚えてなくて。』

『それならまず家康に確認するか。大急ぎでやって貰わないといけないことがあってな。

おい、お前ら、帰蝶を連れてこい。』

政宗が後方の家臣に命じる。

『連れてこいって…帰蝶さんも一緒に来てるの?』

驚いてひなが尋ねる。

『ああ。ま、正確には一緒に来たというか、運んで来たというか…。』

政宗の視線の先には、木の板に寝かされた人の姿がある。

(帰蝶さん!?)

顔面蒼白でピクリとも動かない。整った顔も相まって、まるで蝋人形のようだ。

『ねぇ、政宗。帰蝶さんは生きて…るんだよね?』

『ああ、今のところは。ひなに毒を飲ませた後、どうしてか解毒剤を服用してなかったらしい。

お前より先に毒を飲んでるからか症状の進行が早くてな。

間に合うかどうかは、正直 微妙なところだ。』

(そんな…。確かに帰蝶さんには酷いことされたけど。でも…。)

『助けて…あげて。』

苦しそうな顔で懇願すると、政宗は、ひなの肩を軽く叩いて横を通り過ぎて行った。

ひなは、その場を動けずにいる。
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